最低限住居

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建築家増沢洵の「最小限住居」(1952年)は、建築面積29.75㎡(9坪)、延べ床面積49.58㎡(15坪)の小住宅で、日本建築史において戦後経済の発展期に建てられた実験的小住宅の歴史的代表作である。我々が計画する「最低限住宅」は、増沢の「最小限住宅」を自然の豊かな環境にあわせてアレンジし、そこでの生活に「最低限」必要な機能を付加えた小住宅である。
日常の生活のなかで野良仕事などが一般的に行われる環境においては、屋内外の活動が住宅の土間や軒下などの半屋外空間を介して地続きで行われていることが多い。計画に際しては、増沢の「最小限住居」の「2階部分をずらす」ことで1階部分に軒下空間をつくり、屋内外の活動が軒下空間においてゆるやかに混ざりあうことを目指した。
南側の軒下空間は、薪ストーブが置かれている玄関土間やリビング・ダイニングとつながり、多様な屋内外の活動が季節や天候に関係なく行われる場所である。東側勝手口の軒下空間には、ゴミ箱や野良仕事で使われる道具などが置かれ、日常の生活を支える場所となる。
「2階部分をずらす」ことは、軒下空間をつくるために行ったデザイン操作であるが、結果的に1階部分の北側に屋根ができ、その部分に2階のベランダと浴室のトップライトを設けられるようなった。また、ほぼワンルーム状態の内部空間も、2階の空間が吹抜けのみならず南側の大きな窓を介して外部とも積極的に面するようになり、小さいながらも内部と外部が関係しあう住宅となった。
歴史的背景をもった「最小限住居」の理念が、小さなデザイン操作によって再び現代に接続され、自然豊かな環境に建つ小住宅での生活を豊かにしている。

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建築情報サイトarchitecturephoto.netで紹介していただきました。

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